おしえて、センパイ!劇作家・演出家・小説家/本谷有希子センパイ

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3「そもそも世の中は混沌としているのだ」

女子プロ お仕事量が多いと思いますが、書くの早いんですか。
本谷 純文学の小説家としては普通で、戯曲家としては遅くて、コラムニストとしては早いですね(笑)。
小説や台本は苦しいんです、ゼロから1を作るのがすごく辛くて。1が出来れば、100まで作るのは楽しくなってくるんですけど。コラムだけは、ヤーッって書いてます。
インタビュー風景

本谷さんは、小説や戯曲以外にも、多数のエッセイ、コラム等を雑誌連載しています。

女子プロ 演劇だと不確定要素が多いぶん完璧に出来ないけれど、小説なら、思い通りに書けますか。
本谷 そのかわり、限定が何もないですから。出発が、海の中に一人で、ずっとモヤがかかっているような状態ですね。そういう不安はあります。舞台だったら、そこに人間がいて、出来ることを考えるんですけど。どっちも長所と短所がありますね。
女子プロ どっちがより好き、というのはないんですか。
本谷 そもそもモノを書くのが好きなんです。字で何かを伝えるのが好きなので、あんまりジャンルは問わないです。
女子プロ 本谷さんの小説や舞台の登場人物って、理不尽な目に遭ってるじゃないですか。思い通りにいかない運命にさらされて、もがいていて。その人たちが幸せに暮らすためには、どうやって折り合いをつけたらいいんだろうか、本谷さんはそのへんはどう思っているのかなと、考えていたんですが。
芥川龍之介賞候補にもなった「生きてるだけで、愛。」¥1,365(新潮社刊)。この作品の主人公ほか、本谷作品には、あやういキャラクターが続出します。

芥川龍之介賞候補にもなった「生きてるだけで、愛。」¥1,365(新潮社刊)。この作品の主人公ほか、本谷作品には、あやういキャラクターが続出します。

本谷 人生を割り切るんじゃなくて、思い通りにいかないことを、感覚的に受け止めることが出来ればいいんだと思うんです。頭で理解してると、ダメだと思うんですよ。
いろんな人の人生に触れた時、人生はそういうものだと、感情として雪崩れ込む瞬間があると思うんです。それをつかめた人は、だいぶラクになると思います。
何をキッカケにそれを掴めるかは人それぞれなので、何がいいとは言えないですけど、私は演劇で、なるほどって思ったんですよね。事実を受け入れる感覚というか...。そもそも世の中は混沌としていて、こういう場所なんだ、と。それが分からないと、視野が狭くなっちゃって。
女子プロ 自分だけ何でこんなに不幸なのか、とか思っちゃいますよね。
本谷 きっと、それを解く鍵が、文学にもあるんだと思うんですよ。
私の作るキャラクターには、話の中で、何か、その瞬間を見てもらっているんです。
でもエンターテイメントという形にしたいんですよね。起承転結があったほうが「ヤラレタ」って感じになるかな、って思っていて
女子プロ 本谷さんの作品を見ていると、どこかでふと、救いを感じます。
本谷 ほんの一瞬でも、それがあればいいんですけど...。

4エキセントリックにしてたほうが、カッコイイですか?

女子プロ ご自分が見る映画や漫画など、創作物で、ハッピーエンドのものって好きですか。
本谷 基本はハッピーエンドでいいなと思います。一番いいのは深いハッピーエンド、次は深いバッドエンド、次は浅いハッピーエンド、最下位は浅いバッドエンドですね。それは最悪!(笑)。
女子プロ 浅いバッドエンドってどういうモノですか(笑)。
本谷 最後に主人公が生き残ってた...と思わせて死んじゃう! みたいな。奇をてらってしかいない、ビックリ、どんでん返しー! っていうだけで登場人物が不幸にされてると、深いものを感じないですね。登場人物に愛情があって欲しいです。そういうのは作り手として信頼出来ないです。バカなものは、バカなもので好きですけど。
女子プロ 好きな作品ベスト3って言われたら、何が来ますか。映画でも小説でも、ジャンルなしで...。
本谷 そうですねえ...。3位タイで、影響を受けたものとして、岡田あーみんの『お父さんは心配症』。
女子プロ おお、あーみん!
漫画『お父さんは心配症』

コミックス『お父さんは心配症』第一巻(集英社刊)。娘を愛するあまり、変態的になってしまったお父さんを描く、衝撃のギャグ漫画(1983〜88年まで、雑誌『りぼん』にて連載)。アラサー、アラフォー女子には忘れられない、強烈な作品です。

本谷 もう1つは、冨樫義博の『幽遊白書』と『HUNTER×HUNTER』。
1位はジョージ秋山の、『銭ゲバ』とか『阿修羅』とか。この3つから影響を受けてますね。
女子プロ 主人公が異形の者ばかりですね。
本谷 とくに『お父さんは心配症』は、果てしなくバカで素晴らしくて。富樫さんは、エンターテンメント性、ジョーシ秋山さんには業の深さ。それぞれ良さは違うんですけど、3つともリスペクトしてるんです。突き抜けてますよね、格が違う。
女子プロ しかし、マンガばかりですが...。
本谷 映画とかだと、観たあとわーっと忘れちゃうんですよね。マンガや本は忘れないんですけど(笑)。
女子プロ 女性表現者で、共感する人っていますか。
本谷 ん~たぶんちょっと意味違うけどブリトニー・スピアーズ?(笑)。歌詞も単純で、何これって感じだし(笑)。すっごい単純なんですよ、『私が欲しいんでしょ』の繰り返しだけとか。あそこまで突き抜けてると、共感とは違うんですけど。徹底したエンターテイメントを提供してる人はいいな、と思います。
女子プロ ブリちゃんって、隙が多過ぎるじゃないですか。そこが可愛いですよね。
本谷 あと、虚無を抱えてる感じもいいですよね。私、虚無フェチなんで。
女子プロ ご自分は、虚無はあまりないほうですか。
本谷 ないですねえ。
本谷さん写真

「虚無は抱えてません」と、本谷さん。でも細いお身体を拝見すると、はかなげな感じはするのですが...。

女子プロ 本谷さんの著書を拝読すると、ご本人も、虚無があったり、すごく精神不安定だったりする方なのかな、って印象を受けてしまうんですけど(笑)。
本谷 文体も着眼点も違う、いろんなものを書いて表現したいんです。それがモノを作る上で、とても大事だなと思っているだけで、それが全部、私自身というわけではないです。
女子プロ エキセントリックなキャラクターの描写って、どうやって書いているんですか。
本谷 自分に分かる限りは書く、という感じですね。でもどっかからは、想像ですよね。でもセリフを書いてる時に、感情が入って、自分の身体から声が出てる感覚になりますね。だからどこまでが想像なのか、自分の中でも、限りなく曖昧なんですよね。
あと...書いてる私が、本当に不安定な女のほうが、カッコイイんじゃないかな、と思ったりしますよ。ミステリアスじゃない? カリスマっぽいし。でも私、コラムとかはチャラいでしょう? ああ、実はこいつ、こんな人!? って思われちゃってるのかなあ、というのが心配で。
女子プロ 先日、週刊漫画誌の『モーニング』のコラムに書かれてた「お酒飲まないと、飲み会で損した気分になる」とか、共感しましたけども。禁酒されてるんですか?
本谷 いえ、去年たくさん飲んだので、今年は飲まないぞ、って思ったけど、やっぱり、それはそれで損したなって思った、ってだけなんですけど(笑)。
女子プロ そういうのって私たちにもあるので、身近な感じがしたんです。小説や舞台での印象と違うので、お会いしたら、どんな方なのかなあ、とドキドキしてたんです。
本谷 あー、...もう、こうお話してて、バレてますよね?(笑)。どっちがいいんですかね? エキセントリックな感じがいいですか?
女子プロ いや、普通にされてる方が...(笑)。
本谷 本当? 私に会ってみて、情緒不安定だったら、ちょっとカッコイイなと思いません?
女子プロ (爆笑)いえいえいえ。
本谷 いやあ、アーティストとして、どうカッコつければいいのか、分からなくて。 文章は...誠実に書いてるつもりなんですけどね。

5「みっともないんだけど、かっこいい」

女子プロ 『どうしたらカリスマに見えますか?』っておっしゃるところが、本谷さんっぽい感じがします。そこがいいです。
本谷 そうですか!?
女子プロ 作品でも、『人からどう見られたらいいのか』というテーマをお持ちですよね。
本谷 出来る限り、自分が率先して笑われたい、っていうところがありますね。カッコつけたい自分もいるけど、私がみっともなさをさらすことで、『みんな、こっち来いよ、笑われちゃおうよ!』って(笑)。
女子プロ みっともなくしようよ、って(笑)。
本谷 『みっともないのがカッコ悪い』という思い込みを、自分の中で壊したいんでしょうね。誰かが『みっともないんだけどカッコいい』っていうモノのを出せば、価値観が変わるんじゃないかな、と思って。
女子プロ カリスマには、なりたくないんですか。
本谷 かっこつけたカリスマにはなりたくないです。カッコつけない、リアルなカリスマにはなりたいですねー!
女子プロ おお! 冷静に言いますね。
本谷 いや『誠実』です(笑)。作品に対しては、私にしか書けないものがあるかもしれない、私にしか書けないから書く、ってくらいのモチベーションですよ。
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